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「福祉避難所」について


みなさん、「福祉避難所」「災害弱者」って知ってますか?

「福祉避難所」とは・・・

災害時、既存の建物を活用し、介護の必要な高齢者や障害者など一般の避難所では生活に支障を来す人に対して、ケアが行われるほか、要援護者に配慮したポータブルトイレ、手すりや仮設スロープなどバリアフリー化が図られた避難所のこと。(厚生労働省HPより)

「災害弱者」とは・・・

①自分の身に危険が差し迫った場合、周囲がその危険を伝えることができない状況におかれた者

②自分の身に危険が差し迫った場合、周囲がそれを察知し、周囲からの適切な支援行動と結びつかない状況におかれた者

③危険を知らせる情報を周囲が伝えることができないことで、災害情報を受け取ることができない状況におかれた者

④危険を知らせる情報が伝わっていても、周囲からの適切な支援行動と結びつかない状況におかれた者

 3.11東日本大震災時、多くの障がい者が避難所での困難な生活を経験しました。当時はまだ福祉避難所に関する認知度は低く、自治体によってもその指定状況はまちまちでした。福島県内で開設された福祉避難所はわずか3箇所に留まり、いわき市においては1つも開設されませんでした。

 現在いわき市が策定中の福祉避難所に関する取り決めでは、主に民間の運営する既存の福祉施設や宿泊施設等が福祉避難所に指定されていますが、災害時の受け入れについては、あらゆる事態を想定して細かな規則を設ける必要があり、各指定施設の受け入れ定員に応じて備蓄品の確保やスタッフの災害時の受け入れマニュアル等の基準策定が必要とされています。現状では緊急時のスタッフ配置・受け入れ設備・食料等の備蓄品にかかる費用は各事業所が任意で負担することになっており、受け入れ準備の進捗状況には事業所間で大きな差があります。

 福祉避難所における課題は、一次避難所からの移送手段、受け入れスタッフの不足、各種障がいに応じた施設のバリアフリー化、災害時用の予備ベッド、常備する保存食、情報提供手段、その他資機材等の備蓄に至るまで多義にわたります。特に災害時の受け入れに関しては、各福祉事業所における通常時の入所者・通所者に対する対応に加え、一次避難所から移送されてくる方の分までスタッフは対応しなければなりません。通常時に満床でスタッフも必要最低限の人数しかいない場合、災害時の避難者対応には当然人手が足りなくなるので、行政からの増援スタッフが必須となります。場合によっては事業所の職員自身が被災したり、交通手段が麻痺している等の理由で職場まで来ることができず、対応可能なスタッフが更に不足することも考えられます。それらのあらゆる事態を想定すると、各事業所での備蓄・受け入れ体制の確認を含め、事業所と行政との間での連絡体制や、スタッフの補充体制、避難者のスムーズな移送等、平常時に事業所と行政が防災訓練等を行い、連携体制を整えていかなければなりません。しかしながら、3.11から既に4年以上の歳月が過ぎていますが、福祉避難所に関しては未だに整備が整っておらず、道半ばであるのが現状です。

「多様性を受け入れる一次避難所」

 災害はいつ起きるか分かりません。行政による福祉避難所の整備拡充が急務であるのは当然ですが、私たちが提唱している避難所の「あるべき姿」とは、単に福祉避難所を準備すればそれでよいということではありません。

 3.11震災時、多くの障がい者が、「避難所に行きたくても迷惑がられるから行けない」、「避難所はバリアフリーじゃないから不便で生活できない」、「自分(家族)の障がいをみんなに知られるのがいやだ」など、様々な理由で一次避難所へ行くことを躊躇し、自宅や車の中で過ごした障がい者が多くいらっしゃいます。しかし、災害時のような緊急の際は、障がい者の身の安全を確保する為にも、まずは一次避難所に避難することが重要です。一方の受け入れ側である一次避難所は、どのような方でも安心して避難できるように態勢を整えなければなりません。私たちの取り組み事例である、以前この活動報告でもご紹介しました、「みんなでつくる避難所」訓練では、訓練で取り上げた重要なポイントである、「一次避難所の福祉的整備」の必要性を訴えました。訓練では、障がい者や高齢者が優先的に場所を確保できるようにする「福祉エリア」の設置や、車椅子でも利用できるユニバーサルトイレの設置、段差の解消、視覚障がい者に配慮した手すりや点字ブロックの設置、聴覚障がい者に配慮したピクトグラムや情報の可視化、外国人向けの多言語による情報提供、妊産婦に配慮した授乳所などのプライベートスペースの確保など、一次避難所に必要とされる配慮点を数多く提案しました。

 一次避難所・福祉避難所を問わず、「避難所」と呼ばれる全ての施設において、そこに集まってくる避難者は、多種多様な集団となります。健常者もいれば障がい者もいる、怪我をした人や、高齢者、妊婦、子供、また言葉の分からない外国人も含まれるかもしれません。これら「多様性」に富んだ避難者をまず受け入れなければならないのが一次避難所です。つまり、一次避難所は「どんな人でもまずは受け入れる」場所であり、あらゆる避難者の多様性を包括したインクルーシブな「福祉的受け入れ機能」を備えることが重要であると考えます。

 通常災害時の一次避難所に指定されている施設は、学校や公民館など、各地域ごとに指定されています。しかしそれらの施設は、建築された時代にもよりますが、バリアフリー化されているところもあれば、古い施設では全くもってバリアだらけのところもあります。それら施設のハード面でのバリア状況をいっぺんに改善するのは難しいでしょう。費用も時間もかかります。そこで私たちが提案した方策は、施設のバリア状況に応じて、必要最低限の資機材をそろえることです。段差をなくす移動式のスロープや、折りたたみ式の車椅子用トイレなど、障がい者にバリアとなる部分に必要に応じた機材を準備することで、費用も安く抑えることが出来ます。障がい者や高齢者に配慮された福祉的機能やバリアフリーが整備されることで、それまで受入れが難しかった障がい者でも安心して避難することができるようになります。バリアフリーになって困る人はいません。むしろ、誰にとっても使いやすい場所になります。重度の障がい者等を除いて、ある程度障がいがあっても一時避難所での滞在が可能になれば、そもそも福祉避難所へ移動する必要がなくなる方もでてくるのではないでしょうか。また、行政や各福祉避難所の運営者にとっても負担が減り、より重症度の高い避難者への集中的なケアが可能になるのです。

 つまり、一次避難所の受け入れ体制を見直すことで、関係する組織全般の負担を減らし、災害時に重要度の高い復旧・救援活動に力を注ぐことが可能になるのです。現在、福祉避難所の整備にばかり目が向きがちですが、一次避難所の福祉的整備を進めることは、福祉避難所の整備を進めることと同様もしくはそれ以上に重要なことではないでしょうか。

 もうひとつ重要なポイントがあります。避難所運営には、行政だけでなくそこに住む住民自身が積極的に加わることが重要です。通常一次避難所となる学校や公民館等は、地域の多くの人々が日ごろから利用しており、施設そのものが日常生活の一部でもあります。近所同士のつながりや自治会等、施設をとりまく住民の日常生活のなかで培われた地域のネットワークは、「地域力」として機能し、災害時には「地域防災力」として大きな力を発揮します。

 そのためには、普段からの近所付き合いや、地区ごとの避難訓練や行事等に積極的に参加し、災害時の役割分担を決めておくなどして、皆が顔見知りになれるような横のつながりを強固にしておくことが重要ではないでしょうか。地域に住む障がい者や身体の不自由な高齢者等、災害弱者となりうる方々を平常時から把握し、近所の顔見知り同士で守り合うことができれば、一次避難所を敬遠する障がい者も減り、災害時も躊躇することなく安心して避難所へ向かうことができるのではないかと思います。

 一次避難所は地域総ぐるみでの避難所運営に加え、多様な避難者に対応したバリアフリーの整備で、ソフト・ハード両面の受け入れ態勢を充実させる・・・それでもだめなら福祉避難所へ、といったように、避難者にとって安心の2段構えで災害に備えることが必要ではないでしょうか。


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